(報告が遅れてしまいましたが・・・) 今年度、研修を実施している乳児院で、10月末、ついに、オリジナルのムーブメントプログラムが実現しました。 春から、「乳児院」という環境を知れば知るほど、「遊び」の必要性と可能性を感じ、乳児院が『遊びがいっぱいの大きな家』になればいいな~と思って取り組んできました。 職員のみなさんとの意見交換から、貴重な気づきを得て、感謝です。
(↓過去の記事もご参照ください↓)
◇遊びがいっぱいの大きな家(乳児院での遊び活動支援(2012/7/15)
◇スカーフ一枚でできること(乳児院での遊び活動報告から)(2012/7/26)
◇遊びの中で経験不足による未発達をふせぐ-乳児院におけるMEPA-R活用の効果-(2012/8/16)
研修を受けた8人の保育士さんが、研修のまとめとして、一ヶ月以上かけて、プログラムの立案、準備に協力して取り組み、当日は、他の職員の皆さんの協力も得て、「みんなで夢中になって遊ぶ」を実現しました!
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朝9時半、遊戯室に集まって、まずは、フリームーブメント。 これまで日常の遊びでも少しずつムーブメント活動を取り入れてきていたので、フリームーブメントの時間も、親しみのある遊具で、子どもたちはのびのびと自由に遊んだようです。(ここに既に集団遊びが日常化している乳児院の環境の「強み」があると感じます。) フリームーブメントの後は、走行・歩行ムーブメントで、「前・前・前」「後ろ・後ろ」、「ゆっくり」「速く」、「ドシンドシン」「そ~っと」「ウサギさんみたいに・・・」など、色々な刺激で動きを広げていきました。 そして、円座でみんなが集まって、お名前呼びの活動。 まず、「大人」(職員のみなさん)が一人一人お返事しました。ちょっと照れくさそうだったり、元気いっぱいだったり、大人にも色々な個性があって、親子の活動だと、どうしても親子一体でママやパパの大人が主役になることは少ないんだな・・・もっと大人も主体的に関わる場面があってもいいな・・・とあらためて新鮮に映りました。
大人の次は、子どもたちも一人一人、お名前を呼ばれて、タンバリンにタッチのお返事です。 この活動で、大人たちが大盛り上がり・・・!! 子ども一人一人のお返事の仕方に、驚いたり喜んだり・・・。
以前から感じていましたが、これだけ多くの大人が一人一人の子どもたちと生活を共にし、小さな成長を共に喜んでくれる共同体は、今の時代、本当に稀なのではないかと思います。親子のムーブメント教室でも継続していくと、自分の子どものことばかり追いかけていた親たちが、集団の活動の中で、子どもの見方が変わり、「私の子」から「私たちの子」というとらえ方に変化していくことがあります。そうなると、みんなで子ども一人一人を認め合い、成長を喜び合うという幸せな空気、成熟した場が生まれ、子どもたちも益々のびのびしてきて好循環が起こるのですが、乳児院には、このような大人たちと子どもたちの関係が最初からあるのです・・・!!
そして、「お名前呼び」の活動の意義についても、あらためて考えました。「いま、ここに居る」一人一人を確認し合って認め合う活動は、とても大事なんだな~と感じました。
さて、プログラム紹介を続けましょう・・・。
今回のテーマは、 宝島探険!
設定ムーブメントでは、3つのエリアに分かれた「出店方式」!3つのグループに分かれて回りました。
1つめのエリアは、「大きなお山」 フープの洞窟トンネルをくぐって・・・、
お山に見立てたトランポリンによじ登って、跳んだり、座ったまま揺れを楽しんだり・・・。
最後に、お山の上に咲いている、「赤い花」をゲットしました。
2つめのエリアは、空飛ぶじゅうたん ユランコを活用して、縦・横・回転系の揺れの活動を楽しんで・・・、
カラーボールの入ったプールにダイビング~!
カラーボールの中から、お空の「白い雲」をゲットしました。
3つめのエリアは、いかだにのって川下り 子どもの発達段階に合わせて様々な姿勢でスクーターボードに乗って進み・・・、
川にいる「青いお魚」をゲットしました。
子どもたちが宝島の3つのエリアでゲットしてきた、 「赤い花 」と「白い雲 」と「青い魚 」を大きなかごに集めて・・・、
ほら、みんなのおかげで、こんなにいっぱい集まったよ~!よ~し、まぜまぜしてみるね~♪
あれ、あれあれ、なんだか、ちょっと重くなってきたよ・・・。 手伝って~~~!
と、リーダーの先生がかごの周りに集まって、中から「せーの」で取りだしたのは~~~、
じゃじゃ~~ん!みんな、大好き!パラシュート! 赤と白と青だね!! みんなが集めてた小さな宝物が集まると大きな宝物に変身したよ!というストーリーを盛り込んで、ラストのダイナミックな集団プログラムとしてパラシュートムーブメントを行いました。
揺らしたり、引っ張ったり、ドームを作ったりの活動を楽しんだ後は、魔法の粉に見立てたキラキラ紙吹雪を乗せて細かく揺らして・・・、
最後に、パラシュートが舞い上がると キラキラの紙吹雪の代わりに、何かが降ってきました!?
キラキラの紙で出来た首飾りです!一人一人、頑張ったご褒美にと、首にかけてもらって嬉しそうでした。
紙芝居形式で「ふりかえり」の活動をして、活動を終えました・・・。
活動の後も、グループ別に、順番に「お昼ご飯」の準備に入るので、活動前と同じく「フリームーブメント」の時間になっていました。
ユランコの電車ごっこの遊び一つ見ても、子どもたち同士のかかわり方が、兄弟姉妹のようで・・・、まさに、寝食を共にする関係の親密感なのだろうと感じました。
それでいて、同じ空間の中で、ふと、自分一人の世界に没頭する瞬間も見えてきて・・・、それはそれで、とても素敵な表情、表現でした・・・。
今日は、みんなぐっすりお昼寝するわね~って話している職員の方も、みんな笑顔で、活動前のフリームーブメントより、活動後はさらに積極的に子どもたちに関わって遊んでいました。
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子どもたちのお昼寝を待って、研修のまとめとして、リーダーの保育士さんたちと反省会をしました。 これまで一緒に勉強してくださった研修生の方々が、準備段階では随分気弱になったり、緊張したりして、相談にのって励ましてきましたが、当日は、本当に達成感に満ちたいい笑顔でした。
最後に、「今日は、お疲れ様でした・・・」と言いかけて、ついつい、「おめでとうございました」に言い換えてしまいました。
そんな気分でした・・・
春は、乳児院の現状を少しばかり把握するようになり、ただ、漠然と祈るような想いで、ムーブメントの活動が子どもたちの発達を支え、みなさんが少しでも元気になれたらいいな~と思っていましたが、研修を通して、そして、この充実したプログラムが実現して、私の中では、乳児院が「遊びがいっぱいの大きな家」になるのでは・・・という期待が確信に変わりました。
創造的表現の要素を活かした集団遊びのムーブメントプログラムは、子ども一人一人の「あたま・からだ・こころ」の全体的発達を支えながら、ここ(乳児院)で過ごした時間を、子どもたち自身が誇りに思う力を支える、子どもたちの自尊感情を育む体験として成立する!・・・と。
乳児院の子どもたちが、たくさんの「困難」を抱えているのは事実だけれど、 乳児院の「強み(ストレングス)」を活かして、生活の中にある「遊び」がどんどん発展していくといいな~と思います。
これからも、どうか、続きますように・・・