遊びは遊びのままに・・・

 コロナ禍で、中止・縮小が続いていた学生たちのムーブメント活動ですが、地域子育て支援の取り組みもやっと大きく実践できるようになってきました。今年度は共通教養科目「タウンマネジメント」の履修生が、本当に熱心に取り組みました。たった4人のチームで、経験者も教えてくれる先輩もいない中、過去の活動の記録映像を見たり、何度も連携先の保育園に通ったりして、事前の準備を重ねて挑みました。

 ↓大学のHPに報告が出たので、ぜひ読んでやってください。 

www.wako.ac.jp

  このような学生主体の地域での遊び活動の実践は、これまでも、「地域支援」、「子育て支援」、「学生ボランティア活動」、「地域連携による現場学習」等の側面から評価を得てきましたが、それ以上に、子どもにとっても大人にとっても学生たちにとっても、「本質的に遊びである」という軸を崩さずに継続してきたことが、最も特筆すべき点なのではないかと考えています。


 思い返してみると、ちょうど、学生たちが地域子育て支援の遊び活動を主体的に担う展開が始まった2010年、私は、日本の高等教育機関におけるシチズンシップ教育について調査していた政治学者キャサリン・テグマイヤー・パクさん(米国セントオラフ大学准教授,当時)から取材を受けました。

 パクさんの質問を受けながら、私と学生たちの取り組みがシチズンシップ教育であると教えられ、また米国の大学で市民参加教育として様々な試みがなされているという教示を受けました。社会の一員として自立し、社会に積極的にかかわろうとする態度を身につける、民主主義社会を支えるべく社会参加する市民を養成しているのだと言われれば、確かにシチズンシップ教育なのだろうとも思いましたが、学生たちと共に、目の前で展開する楽しい遊びの場づくりに夢中だった私は、それ以上に想いを巡らすことができませんでした。

satsuki-lab.hatenablog.com

   それから10年の間、活動があることが当たり前で、繰り返しの中で、私の感覚も鈍っていたところがあったかもしれません。コロナ禍で活動ができなくなって、実践研究の代わりに、活動を担っていた卒業生たちを対象にオンラインのインタビュー調査を行ったのは、よい機会でした。

 卒業生の言葉に、そして、また、息を吹き返すように始まった今年度の学生たちによる活動の様子に、パクさんの話を思い出し、なるほどと感じています。

 ・・・と、同時に、あらためて私が肝に銘じていることは、「結果として」立派に成熟した市民に育ち、ウェルビーイングを実現している卒業生たちの、その頼もしい姿に惑わされて、本活動の教育的価値や成果を掲げ、「人材育成」という名のもと、無理やりに形づくるようなお節介なことをしてはいけない、学生たちに向けた力の注ぎ方を間違えてはいけない…ということです。

 「遊びは遊びのままに」あることを祈り、私自身も共に遊ぶ主体としてありながら、その意義を唱えていきたいと思います。