郡山で秋の果物狩り!-室内遊びの開発研究プロジェクトによる親子遊びの実践報告-

 2013年11月27日(水)、福島県郡山市の田村公民館にて親子ムーブメントのプログラムの実践が行われました。

 この取り組みは、科学研究費による研究プロジェクト「東北版あそびのちからはいのちのちから」( 課題番号:25350948「原発事故影響下の子どもの発達と幸福感を育む室内遊びの開発と地域支援の実証的研究」、研究代表者:小林芳文、研究分担者:大橋さつき)によるものです。

 幸い秋晴れのよいお天気でしたが、さすがに11月、朝の体育館は冷えます…。ストーブを囲んでスタッフミーティングです。 今回のプログラムは、NPO法人CMDゆうゆう の代表惠濃志保さんがプログラムリーダーをつとめ、和光大学の学生5名と現在研修を重ねているNPO法人フローレンス「インドアパーク郡山」のプレイリーダー4名、実施先の子育てサークル「のびのびし隊」さんの先輩ママさんたちが現地スタッフとして遊びの場を支えました。

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 フリームーブメントでは、大人も子どもも色々な遊具で自由に遊びました。 初めて会う者同士、「人」という環境が、自然にかかわりあって、優しく馴染んでいく様子が伝わってきました。
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 みんなで集まって、一人ひとりのお名前呼びをした後は、ダンスムーブメントを楽しみました。

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 ロープムーブメントでは、輪にした1本のロープをみんなで揺らしたり、引っ張ったり…、
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 そして、走行・歩行ムーブメントでは、ママが子どもを抱っこして、ウサギ・キリン・コアラなどの動物に変身したり、飛行機みたいにスピードを出して走ったり回ったりしました。
 ママたちは、この時点でもうクタクタ…、悲鳴のような声も聞こえてきましたが、子どもたちは大喜び!それを見て、やっぱり、ママも笑顔になっていました。
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 設定ムーブメントでは、秋の果物狩りのハイキングに出かけるイメージで遊びました。 最初は、スカーフやユランコのソリで乗りものに乗ってハイキングコースの入り口に移動です。  

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 ハイキングコースの最初は、ムーブメント遊具「ピッタンコセット」の道です。 足型を活用して、正中線交差の動き(左右の足をクロスして歩く)を刺激しています。 小さいお友達は、真ん中の線をまっすぐ歩くこともできます。
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 スペースマットを活用したコースは、「虹色の石」と題していました。子どもたちは元気にぴょんぴょん跳ねていきました。
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 最後は、ロープで作ったジグザグ道。上手に慎重に歩いていました。
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 現場での適用を目指していますので、ムーブメント遊具を活用したシンプルなサーキットプログラムになっていますが、何度も何度も繰り返し挑戦する子どもたちの姿に、「環境の力」をあらためて実感しました。 次に、ホールの舞台の段差を活用して、ロープウェイで峠を下るように、棒にぶら下がって移動しました。 ゴールのパラシュートの船までの距離は結構ありましたが、子どもたちはしっかり、そして、嬉しそうにつかまっていました。
 
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 パラシュートプログラムでは、みんなで大きな舟に乗っているように揺れて楽しみました。  
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 そこに、風船がついたオーガンジーパラシュートが登場して、子どもたちは、果実をもぎるようにして一生懸命に手を伸ばし、好きな色の風船を各々にゲットしていました。
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 さらに、一人ずつ乗せてダイナミックな揺れ挑戦して…、
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 ラストは、落ち葉をイメージした紙吹雪を散らして…、舞い散る落ち葉に歓声があがり、子どもも大人も飛び跳ねていました。
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 床に積もった紙吹雪を大事そうに集めている姿に、砂や土や葉っぱに触れることを禁止されてしまう子どもたちの現実にふと意識が戻りました。
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 現地のお母さん方やスタッフのみなさんの話を聞くと、原発事故の影響が子どもたちの心と身体に現れていくのはこれからなのに、既に「過去のこと」として扱われてしまっているようで、漠然として不安を抱えたまま閉塞感が増していると感じます。  
 様々な立場やしがらみを乗り越えて、子どもを育む環境を少しでも良くしたい、一緒に元気になりたいと思っている大人たちが、みんなで繋がって力を合わせていかねばならないと強く思いました。もちろん、それは、今の日本では、どの地域でも大事なことだけれど、とにかく、ふくしまは「緊急」なのです。 外遊びに負けないくらい、ワクワクドキドキできる室内の冒険遊びを一つでも多く創り出すことを、協力者と共に目指したいと思います。
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 親子ムーブメントの後、インドアパーク郡山にてふりかえりと研修を実施しました。 プレイパークのスタッフは、研修開始前、保護者が本やスマホに夢中になり子どもだけが遊ぶ、という安全な遊び場ゆえに生じてきた構図をなんとか変えていきたいと話していました。 数回の研修を積み、ムーブメントの遊具を介することで、保護者に声が掛けやすくなり、コミュニケーションがとりやすくなったと報告してくれました。 また、ムーブメント遊具の活用法が無限に広がることを知ることで、今までの自身の遊具の使い方に固定概念があったが、同じ遊具でも様々な遊び方を展開できるようになってきた、その結果、家庭での取り組みに繋がる活動を工夫して提示することができるようになってきたと話してくださり、嬉しい手応えを感じています。
 翌日は、「保育士、幼児教諭の卵」の女子大生、110名程とムーブメント遊具の活用に関する実技研修を行いました。先週に講義をやり、引き続きの実技でした。 音楽伴奏の手本として、川崎市麻生区の職員研修で勉強してくださった保育士の先生にも協力してもらいました。「私も3年前にムーブメントに出逢って、保育の仕事に自信が持てました」と自己紹介してくださり、その言葉に、学生さんたちの目が大きく開きました。やはり、現職の方の言葉はダイレクトに学生さんに響くのですね。 体育館はとても寒かったけれど、ロープ、スカーフ、形板の基本プログラムをどんどん体験して元気に動いてくれました。パラシュートドームの中で「楽しい~!」と子どものように微笑み合う姿が印象的でした。心に響く感想文があり嬉しかったです。
 遊び環境には、「施設」も「遊具」も大事だけど、一番は「人」と思います。すぐに結果の出ることではないけれど、学生さんへの研修は、有効な「種蒔き」と思って取り組んでいます。 この日、身体いっぱい動かして笑顔で共に遊んで学んでくれた学生さんたちの多くが、近い将来、福島の子どもたちを育む仕事に就きます。 そして、もう少し先には、「お母さん」になる人が出てきます。 彼女たちが子どもたちと触れ合う未来に向けて、できるだけ「遊びの種」を蒔いてみたいと思います。