遊びを生み出すアセスメント~MEPA-Rの活用~

  今週は、保育園、乳児院等のフィールドの施設内研修では、「MEPA」の理解と活用についてお話させていただいています。

  MEPA (Movement Education Program Assessment)は、1985年、日本におけるムーブメント教育・療法独自のアセスメントとして開発されたものです。子どもの運動スキルや身体意識、心理的諸機能、情緒・社会性の発達の状況を把握し、ムーブメント教育・療法における支援の手がかりを得ることを目的としています。

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     つまり、単に運動発達年齢を知るための発達診断ではなく、アセスメントの結果を手がかりに、ムーブメント教育・療法による支援プログラムの構成につながるツールなのです。

 (なお、2005年には、基本となる構成・内容は変えず、必要なアセスメント項目を増やし全ての領域を30項目に統一して改善した、改訂版が出版されました。改訂の「Revised」がついて、現在のものは正式には「MEPA-R」と呼ばれています。)

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 研修では、MEPAの構成やプロフィール表の作成について理解していただくために、詳しく説明をしていますが、ここでは、活用のポイントについて、少しまとめてみます…。

 「アセスメント」と聞くと、最初は少し複雑に感じるかもしれませんが、MEPAは、開発当初より、家庭や学校・保育園などの現場で関わる先生方が簡単に使えるように・・・と考えられたものですので、各項目は、誰でもが日常生活や遊びの中で自然に確認できる簡単な内容となっています。

 また、MEPAは、運動発達年齢を知るための発達診断にとどまらず、その先にある支援プログラムの充実、具体的な支援の流れをつくることを目指して考案されていますので、連携したプログラムガイドとして開発された「ステップガイド 」を併用することで、「アセスメント→目標の設定→支援プログラムの考案→実践→アセスメント…」の循環的な流れにのって展開できる一体型のシステムになっています。

 

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 たとえば、MEPA-Rの「姿勢」の領域には、「P-16:開眼片足立ちが一瞬できる」という項目がありますが、この項目に該当するステップガイドのページには、この項目に(±)や(-)の評価が入ったときに推奨するムーブメントプログラムとして、「形板に触れずに歩く」、「カラーロープをまたいで歩く」、「大人の支持で片足立ち」など、具体的な活動が紹介されています。

 

   今年度の研修で、私が大切にお伝えしているMEPA活用のポイントは・・・、

  家庭の「生活」と「遊び」の中で自然に無理なくチェックすることができ、その項目内容は、「評定」であるとともに、今日から取り組む「遊びの活動案」である。    ということです。

  MEPAを使って「発達検査」ができるわけですが、子どもの方はきっと「検査されてる」って気づきません。

 普通に生活している中で遊んでいるうちに、MEPAチェックはできるからです。初めての場所で知らない人の前で、突然、これで遊んでごらん・・・と馴染みのない検査用具を出されて、凍り付くお子さんだっていますよね・・・

 (ちなみに、当時、既にお兄ちゃんと口喧嘩もどきになるほどおしゃべりできていた我が家の次男坊、1歳6ヶ月健診では検査員に背を向け抱きついて固まり一言もしゃべりませんでした・・・。)

 同じような意味にもなりますが、もう一つ・・・、

 ●親や親しく関わる担当者(保育者・養育者)による「芽生え」の発見が重要!

という点を強調して「芽生え(±)どんどんつけてください!」とお伝えしています。   MEPAの特徴の一つとして、「できる(+)」「できない(-)」に加えて、もう少しでできそうなもの、やりたがっているができないもの、できそうだがやらないものなどから「芽生え反応(±)」の評定をつけけることが推奨されている、という点があります。

 評定者によって結果が変わる・・・と考えると客観性とか信憑性とか疑問に思われる方もいるかもしれませんが、これら芽生えの反応の発見には、きめ細かな観察と信頼関係の構築が必要であり、共に生活を営む家族や親密に関わる担当者だからこそできる作業で、支援プログラムの発展においては重要な鍵となっていると考えられています。

  そして、MEPA活用の効果としては・・・、

 ●小さな発達の変化や芽生え反応を捉えることができる。

 ●経験不足による未発達をふせぐ。

 ●遊びの環境づくりの指針になる。

 ●子どもに関わる人々の間で 情報・課題・喜び・達成感などの共有ができる。

といったことをお伝えして、活用に向けて具体的なイメージがわくように、私達が実施したMEPAサーキットプログラムを紹介しています。

 

 研修に参加された先生方が、「これすぐ使えそう!」っという表情で資料をぐぐっと真剣な眼差しで読み込んでいたのが印象的でした。

 質問にお答えしながら、私自身もあらためて、一般的なアセスメントや発達検査法と比較した場合、MEPAには、ラベリング(評価・評定)する要素より具体的な活動案を生み出す要素の方が強いんだな~と感じました。

 評定すること自体が目的ではなくて、子どもの発達を支えるために豊かな遊びの場を家庭や現場につくるためのアセスメントなんだと・・・。

 

  もう随分前ですが、ある障がい児のお母さんが 「色々な施設を回って、検査や診断を受けたけど、ラベリングされるのはもうたくさん!! 結局、じゃぁあ、どうしたらいいの!?って焦りと不安が増えるばかりで・・・。

 そんなとき、ムーブメントに出逢って考え方が変わりました」とお話してくださったことを思い出しました。

 私自身にとっても新しい気づきと学びの場です。

 残りの研修も楽しみに伺います・・・